会社を倒産させるという事

35歳で会社を倒産させた壮絶な日々を赤裸々に綴ります。

7.会社設立から倒産までの軌跡 ~「燃えてるの、僕の車です。」~

永遠ステ看論を語った僕であったが、実を言うと独立してから4ヵ月間のも長きに渡り僕は物件を売ることが出来なかったのだった・・・。

 

ステ看についてはこの頃毎日400枚朝から晩まで貼っていた。

足立区某所で現地販売会を行うにあたり、埼玉県の草加駅から矢印看板を引っ張ったりしていた。

お客さんは沢山集まった。

矢印看板には「すぐ近く!」と記載していたので、埼玉県草加市からお越し頂いたお客様には「どこが近くなのよ!文句言おうと思って来たけども!」とありがたいクレームをいただいたりもした。

 

集客しても

 

接客しても

 

案内しても

 

 

売れない・・・。

 

 

「おかしい。。。」

 

僕が今まで働いてきた不動産会社では3ヶ月売れないとクビもしくはクビ同然の洗礼を受けることになる。

当然僕は2ヶ月売れない事は不動産業を始めてから今までなかった。

 

ステ看もタダではない。

意外に高いのだ。

毎回5000枚単位で発注するのだが、1回20万円以上かかっていた。

この頃は数にものを言わせて貼っていたのだ。

 

しかしながら

 

 

売れない・・・。

 

お金がない・・・。

 

やばーい!

 

 

さすがに僕は焦っていた。

これでは宅建業者免許の登録どころではなかった。

 

毎日毎日合宿状態だ。

スーパーで安いカップラーメンを大量に買いこみ会社か車で寝泊まりした。

洗濯は会社の自慢の風呂場でジャブジャブ洗う。

野人状態だ。

 

夢ある会社設立。。。

 

「なんじゃこりゃ!」

 

だった。

 

自信満々で独立した僕に更なる悲劇が襲い掛かる。

 

本当に悪いことは次から次に降りかかるものだ。

呪いなのか祟りなのか。

 

負のスパイラルに完全に陥ってしまった。

 

ある日会社近くのコインパーキングに車を停めた。

気に入っていたBMWの5シリーズだ。

忘れもしない2010年8月27日の23時くらいの事だった。

 

ネクタイをゆるめていると、運転席の脇から白い煙がモクモクと。

状況がよくわからず僕は冷静に静観していた。

だんだん煙の量が増えてきた。

と思ったその時。

火がでてきたのだ!

 

「火事だ!」

 

僕は焦って自動販売機に走った。

急いで「いろはす」を2本買って車に戻ると、さっきより火の手が強くなっている気がした。

とりあえず落ち着いて僕は震える手で買ったばかりの水2本を掛けた。

 

 

 

まったく効果なし・・・。

 

 

自力での消化を諦めた僕はすぐに119番通報した。

間違えて199番に掛けてしまうも、すぐに掛けなおした。

このコインパーキングは大通りから一本路地に入った場所だったため、僕は消防車を誘導しようと燃え盛る車を離れ大通りに走って移動した。

 

こんな時の時間は本当に長い。。。

ちゃんと来るのか。。。

焦る焦る焦る焦る!

 

そんな時だった!

 

 

「キャー!家事!家事!」

 

 

中年くらいの女性だろうか。

叫んでいる声が聞こえる。

僕は戻るのが怖くて逃げだしたかった。

ただ、僕には気になることがある。

停めた車の後ろは民家なのだ。

 

家が燃えるかもしれない・・・。

 

考えただけでゾッとしていた。

 

そんな時、離れた場所からようやく消防車のサイレンが聞こえてきた。

早く!早く!早く!

僕は一生懸命両手を挙げて場所を知らせた。

 

消防車と共に僕は現場に戻った。

23時だというのに見物人は軽く50人を越えていただろうか。

すごい騒ぎになっていた。

 

BMWはさっきとは比べ物にならないくらいに燃えていた。

窓を割り、サンルーフを割ってでている炎は裏の家の2階の窓位に達していたので4m以上の高さがあったのではないか。

運が良かったのは両隣に車は止まっていなかった。

 

消防車が消火活動をしているなか、7,8人くらいで警察が来た。

 

 

 

「燃えてるの、僕の車です。」

 

 

 

僕は警察に名乗り出た。

3人の警察から色々と質問を受ける。

1人の警察が聞いてきたことを、後から近寄ってきた警察に同じことを聞かれる。

僕はショックを受けていたし、見物人から後ろ指を指されているのもわかったし本当にその場にいるのが嫌だった。

 

そうこうしているうちに、僕のBMWは沈下した。

誰がどう見てももう乗れる車ではない。

窓ガラスは全て割れていて、ボディは残っているが黒く焦げている。

ミラーは片方落ちていて、室内は全焼だ。

驚いたことにステ看は水分を乾かせばまだ使えるんじゃないかという形で残っていた。

僕を見捨てなかったのはステ看だけだった。

 

 

この後、警察に詳しい状況を説明して、翌朝8時に現場検証を行うという事でその場は解散となった。

気が付けば見物人もいなくなっている。

 

僕のカバンやらスーツの上などは燃えてしまった。

僕は昔からお金は裸でポケットに入れている。

お金は無事だ。

鍵がない。

 

解散になってしまったものの僕は鍵がなにもないので途方に暮れてしまった。

しょうがないので行きつけだったスナックへ行って何もなかったように楽しく過ごした。

あれは真夏の夜の夢

早く忘れたかったのだ。

 

 

 

売れないわ車は燃えるわ

 

 

 

この頃の僕の口癖だ。

 

翌朝現場検証を行い、結果としてはライターが火をつける形で見つかった事からライターからの出火という事で収まった。

運転席のシート下にあったのだが、シート位置を移動したか何かの拍子でライターがついてしまったとのこと。

若干腑に落ちなかったが、車の任意保険の車両保険に入るお金がなかったので、原因が特定できたところで何の意味もない。

僕は納得をした。

そして裏の家も網戸は少し溶けただけとの事で、同情してか許してくれた。

コインパーキングも壊れていたようだが、事情が事情なのでとの事で許してくれた。

 

僕は不動産屋にとって絶対に必要な車を失ってしまった。

 

僕は5年以上たつ今でも「いろはす」と「BMW5シリーズ」を見ると燃え盛るあの光景が目に浮かんでくる。

 

ドイツ車はよく燃えるからもう一生乗りません。

と断言していたが、2年後にベンツを買ってしまうところあたりが僕の良いところだと思う。